1. なぜ「危険なプロジェクトを避ける」ことが大事なのか?
プロジェクトマネージャー(PM)として働いていると、さまざまなプロジェクトに関わる機会があります。その中には、どう考えても成功するイメージが湧かない、「危険なプロジェクト」 も存在します。
現実問題として、デスマーチになってしまったプロジェクトを鎮火するよりも、そもそも最初から関わらない方が、当事者全員が幸せになれる というのが私の考えです。
デスマーチプロジェクトは、どんなに優秀なPMでも簡単に成功に導けるものではなく、「頑張ればなんとかなる」 という考え方は幻想です。
そもそも炎上しそうなプロジェクトには 「進めるべきではない理由」 があるはずです。
それなのに「とりあえずやろう」となってしまうプロジェクトは、最初の時点で成功の可能性が低い のです。
だからこそ、「このプロジェクト、本当にやる意味があるのか?」 を見極め、無理に関わらない選択肢を持つことがPMには求められます。
2. 危険なプロジェクトの特徴 – 受けるべきでない案件とは?
「このプロジェクト、なんかヤバいな…」と感じたら、本当に進めるべきなのか? を冷静に判断する必要があります。
特に、以下のような兆候が見られるプロジェクトは要注意です。
1. 目的が曖昧で、誰も本当に成功を定義できていない
- 「とりあえずやる」「何か新しいことをやりたい」という曖昧な動機
- 成功条件が不明確で、関係者によってゴールが異なる
- 「走りながら考えよう」という無計画な進め方
このようなプロジェクトは、最初から成功が約束されていません。
関係者の間でゴールが違うまま進んでしまうと、プロジェクトが進むほど混乱し、軌道修正が困難になります。
2. 非現実的なスケジュールが前提になっている
- 「この納期は無理では?」と感じるスケジュール
- 根拠のない楽観論(「なんとかなる」「気合で乗り切る」)が蔓延
- 「短期間で完成できる」と言われながら、詳細設計が全くない
スケジュールが無理なプロジェクトは、リリース直前に問題が噴出し、結局は手戻りが増えて長引く のが常です。
PMの役割は、現実的なスケジュールを組むこと であり、無茶な計画をそのまま受け入れる必要はありません。
3. リソース不足が明らか
- プロジェクトに必要なスキルを持つメンバーが不足している
- 「少ない人数でなんとかする」前提になっている
- 外部リソースを調達する計画がない
どんなに優秀なPMでも、リソースが足りなければ適切な結果を出すのは困難です。
必要なリソースなしに無理にプロジェクトを進めても、結局は崩壊するのがオチです。
4. 直感的に嫌な予感がする、胸騒ぎがする
- 論理的に見れば問題がないように思えるが、なぜか違和感を感じる
- 「なんかモヤモヤする」「この案件、何かおかしい」と思ったら要注意
- 経験上、こうした「胸騒ぎ」は後々大きな問題として表れることが多い
PMを長くやっていると、成功するプロジェクトと危険なプロジェクトには独特の「空気感」があることに気づきます。
デスマーチになる案件の多くは、最初の段階で「なんかイヤな予感がする」と感じることが多い のです。
例えば、
- チーム全体が「やりたくなさそう」な雰囲気を出している
- クライアントの発言や関係者の言動に微妙なズレを感じる
- プロジェクトの方向性がなんとなくフワッとしている
こうした直感的な違和感は、後になって「やっぱりあの時点で回避すべきだった」と思うことが多いものです。
論理的に問題がないように見えるプロジェクトでも、「胸騒ぎ」がするなら回避すべき。
PMは経験を重ねるごとに「直感的な嗅覚」が磨かれていきます。
この感覚を軽視せず、大切にしましょう。
3. 危険なプロジェクトを見抜く嗅覚を鍛える
では、どうすれば「危険なプロジェクト」を見抜くことができるのでしょうか?
経験を積めば直感的に「これはヤバい」と感じるようになりますが、それを言語化してみると、以下のポイントが重要です。
✅ キックオフ時点で違和感を感じたら要注意
- 誰も本気でプロジェクトの意義を説明できない
- 関係者が「このスケジュールでいける」と言いながら確信がない
- やるべきタスクの整理が全くされていない
「なんかおかしいな」と感じたら、その直感を無視してはいけません。
✅ 「なんとかなる」の言葉に注意
- 「なんとかなる」「気合で乗り切る」「とりあえず進めよう」
- こうした発言が頻出するプロジェクトは、ほぼ確実に炎上する
「なんとかする方法」を具体的に議論できないプロジェクトは危険 です。
✅ 関係者の温度差が激しい
- 上層部は「楽観」、現場は「悲観」している
- 「上司が決めたからやるしかない」と誰かが言っている
「本当にこのプロジェクトをやる意味があるのか?」を疑うべきです。
4. 「やらない理由は聞きたくない」という言説に注意
危険なプロジェクトを推進しようとする人は、よくこう言います。
「やらない理由や言い訳は聞きたくない」「とにかくやってみよう」
しかし、どんなに気合を入れても、不可能なことは不可能 です。
- 人間は空を飛べない
- どんなに駄々をこねても、おもちゃは買ってあげない
このスタンスはPMにも当てはまります。
「無理なものは無理」と言うべきなのです。
ただし、ここで一つ注意があります。
この「駄々をこねる子供」は、実は権力を持っていることが多いのです。
ストレートに「無理です」と突っぱねるのではなく、以下のような伝え方を意識すると良いでしょう。
✅ 「どこがどう無理なのか?」を論理的に説明する
✅ 「このスケジュールなら、ここまでなら可能です」と代替案を提示する
✅ 「今のまま進めると、こういうリスクが発生します」と冷静にリスクを伝える
5. まとめ – 無理なプロジェクトに関わるな
PMの仕事は、無茶なプロジェクトを根性で乗り切ることではありません。
本当に重要なのは、成功するプロジェクトを見極め、適切な形で進めること です。
- 「このプロジェクト、本当にやる価値あるのか?」を問う
- 違和感を感じたら、躊躇せずに撤退する判断も持つ
- 「無理なものは無理」と伝えるが、伝え方は工夫する
無茶なプロジェクトを受けてしまうと、PMもチームも疲弊し、最悪の場合、プロジェクトが完全に破綻します。
だからこそ、「嗅覚」を研ぎ澄ませて、危険なプロジェクトに近づかない という選択肢を持ちましょう。
読者への問いかけ
- あなたは今、危険なプロジェクトに関わっていませんか?
- 「やらない理由は聞きたくない」という言葉に流されていませんか?
- 本当にそのプロジェクト、やる価値がありますか?