1. 導入：PMの仕事は「問い」を立てること

プロジェクトマネージャー（PM）の役割は、単にスケジュールを管理し、タスクを割り振ることではありません。
本当に重要なのは、「適切な問いを立てること」 です。

良い問いを投げかけることで、チームの思考が深まり、プロジェクトの方向性が変わることもあります。
反対に、問いの質が低いと、表面的な議論に終始し、問題の本質が見えなくなることも。

「問いが変われば、プロジェクトの方向性が変わる」
この記事では、PMが問いを立てることの重要性と、実践的な問いの立て方について考えていきます。

2. 「問いは鏡である」 – 問いが人の思考を映し出す

1. 人は自分の考えを客観的に見ることができない

私たちは普段、自分が何を考えているのかを意識していません。
「当然こうするべきだ」「この仕様が最適に決まっている」といった思考は、無意識のうちに確信へと変わります。
しかし、自分が思っているほど、私たちは自分自身の考えを客観視できていない のです。

2. 問いは思考を整理する「鏡」

鏡がないと自分の顔が見えないように、適切な問いがなければ、考えの抜け漏れや矛盾に気づくことができません。
PMが問いを投げかけることで、チームメンバーは自分の考えを改めて整理し、客観的に見つめ直すことができるのです。

例えば、こんな問いを投げかけることで、メンバーの思考が整理されることがあります。

  • 「そもそもの問題は何でしたっけ？」
    → 問題が細分化されすぎて、議論の本筋が見えなくなっているとき。
  • 「その案では誰がどう楽になるのですか？」
    → 技術的な実装ばかりに気を取られ、本来のユーザー視点が抜け落ちているとき。
  • 「この仕様で失敗するとしたら、一番まずい展開は何でしょう？」
    → リスクが適切に議論されていないとき。

こうした問いを投げることで、「ああ、確かにそこを見落としていたな」 とメンバーが気づくことができるのです。

3. 「問い」が成り立つための前提 – 人を信じる力

1. 問いが成立するのは、メンバーを信頼しているから

問いを投げかけることでチームが冷静に議論し、最適解を導き出せるのは、PMが「メンバーには考える力がある」と信じているから です。
もしPMが、「自分が答えを決めないと、このチームはまともに進まない」と思っていたら、問いを投げるのではなく、指示を出してしまうでしょう。

しかし、本当に優れたPMは、「メンバーは考える力を持っている」と信じ、適切な問いを通じて彼らの思考を引き出す ことができます。
問いとは「あなたなら考えられるよね？」という信頼の表れでもあるのです。

2. 人間不信のPMは問いを使えない

逆に、人間不信のPMは問いを立てることができません。

  • 「この人たちは、きちんと考えてくれない」
  • 「答えを自分で用意しないと、プロジェクトが破綻する」
  • 「PMの仕事は、メンバーを管理し、指示を与えることだ」

こうした考えを持つPMは、問いを使わずに「指示型のリーダー」になってしまう のです。
その結果、メンバーは受け身になり、言われたことだけをこなす存在になってしまいます。

4. PMが意識すべき「問いの立て方」

1. 自分の意見を押し付けない

問いは、メンバーの思考を引き出すためのものです。
しかし、無意識のうちに「誘導質問」をしてしまうことがあります。

  • × 悪い例: 「この機能、必要ですよね？」（すでに答えを決めている）
  • ○ 良い例: 「この機能の目的は何ですか？」（考え直す余地を与える）

2. 「そもそも」を問う

プロジェクトが進むにつれて、当初の目的が曖昧になることがあります。
そんなとき、PMが「そもそも」を問い直すことが重要です。

  • 「そもそもの問題は何でしたっけ？」
    → 議論が仕様の細かい話に流れすぎたとき、根本に立ち返る。
  • 「誰のためのプロジェクトなのか？」
    → 技術的なこだわりや社内事情ばかりが優先され、ユーザー視点が抜け落ちていないかを確認する。

3. 失敗を想定する問い

  • 「この案が失敗するとしたら、一番まずい展開は何でしょう？」
    → 事前にリスクを考える機会を作る。
  • 「もしこの仕様がうまくいかなかったら、何を変えるべきでしょう？」
    → 柔軟な対応を促す。

5. まとめ：問いの質がプロジェクトの質を決める

  • 問いは鏡である → メンバー自身が考えを客観視し、適切な答えを導くための道具。
  • 問いを投げるには、メンバーを信じることが前提。
  • PMの仕事は答えを出すことではなく、問いを立て、チームが思考する環境を作ること。

適切な問いを立てることで、PMは「チーム全体の知性を引き出す役割」を果たします。
問いを使うことで、プロジェクトはただのタスクの積み上げではなく、目的を持った価値あるものに変わるのです。

💡 読者への問いかけ:
あなたは普段、どのような問いを意識していますか？問いの力を活用して、チームをより良い方向へ導けるように考えてみましょう。