1. 導入:プロジェクトは本当に成功したのか?

「プロジェクトは予定通りに完了しました。予算も納期も守り、仕様通りのシステムができました。
でも、それは本当に成功と言えるのでしょうか?」

PMとしてプロジェクトに携わると、「成功の定義」 をどこに置くかで結果が大きく変わることに気づきます。
特に、QCD(Quality, Cost, Delivery)だけでは測れない部分 も多くあります。

実際、プロジェクトが終わった瞬間にチームが疲弊してしまったり、納品したのに顧客が満足していなかったりするケースは少なくありません。
「無事に終わったはずなのに、達成感がない…」そんな経験をしたことがあるPMの方も多いのではないでしょうか。

この問題を考えるにあたって、以前執筆した以下の記事が参考になるかもしれません。
👉 [ゼロから始めるプロジェクトマネジメント] プロジェクトのQCDより目的を優先しよう

今回は、QCDだけでは測れない「本当の成功」について考え、どのようにプロジェクトの成功を定義すればよいのかを掘り下げていきたいと思います。


2. QCDだけで本当に「成功」と言えるのか?

一般的に、プロジェクトの成功指標は 「QCD(Quality, Cost, Delivery)」 で測られることが多いです。

  • 納期(Delivery): 期限内に終わったか
  • 予算(Cost): 予算内に収まったか
  • 品質(Quality): 仕様通りの成果物が完成したか

もちろん、これらはプロジェクト運営において重要な指標です。
しかし、QCDを満たせば本当にプロジェクトは成功したと言えるのでしょうか?

次のようなケースを考えてみます。

✔ 「成功したはずなのに、誰も満足していない」プロジェクト

✅ 納期通りに開発が完了したのに、顧客がほとんど使っていない
✅ チームが納期を守るために無理をし、燃え尽きてしまった
✅ システムは仕様通りに作られたが、ビジネス的な価値を生まなかった

このようなケースでは、QCDの達成だけでは**「成功」とは言えない** ですよね。
では、何を成功の指標として考えるべきでしょうか?


3. 「本当の成功」を測る3つの視点

QCDを超えた「本当の成功」を考えるには、以下の3つの視点が重要だと思います。

✅ 1. ステークホルダーの満足度

  • 「仕様通りの成果物が完成した」だけでは不十分です。
  • 重要なのは、「それを使う人にとって本当に価値があるのか?」 ということです。
  • PMはプロジェクト開始時に、成功の定義をステークホルダーとすり合わせることが不可欠です。

📌 例:

  • 社内システム開発 の場合、現場のユーザーが実際に使いやすいものになっているか?
  • 新規事業のプロジェクト なら、市場に受け入れられるものができているか?

✅ 2. チームの持続可能性

  • プロジェクトが終わった。でも、チームは疲弊していませんか?
  • 「次のプロジェクトにも挑戦したい」 と思える状態が、持続可能な成功の条件だと思います。
  • 無理をして一時的な成果を出しても、それが続かなければ意味がありません。

✅ 3. ビジネス的なインパクト

  • プロジェクトは何のためにやったのでしょうか?
  • システムを納品することが目的になっていませんか?
  • 「完成した」ではなく、「それが価値を生み出したか?」を評価するべき です。

4. 失敗したように見えても成功だったプロジェクトとは?

あるプロジェクトが 納期を超過し、コストもオーバーしてしまった
しかし、結果として市場に適したサービスを提供でき、大きな価値を生みました。
このプロジェクトは 「失敗」でしょうか?

逆に、予定通り完了したのに、ほとんど使われず、ビジネス的な成果もなかったプロジェクトは「成功」だったのでしょうか?

プロジェクトの成功を評価する際には、単なるQCDではなく、「長期的な価値」 という視点が不可欠だと思います。


5. 成功の定義を見直すためにPMができること

プロジェクト開始時に「成功の定義」を明確にする

  • 「QCDだけでなく、顧客満足度・チームの持続性・ビジネス価値も含める」
  • 関係者と合意を取ることが重要です

プロジェクト終了時に「本当に成功したか?」を振り返る

  • 「納期を守った」ではなく、「価値が生まれたか?」を評価
  • 「次のプロジェクトにつながる状態か?」も考慮する

プロジェクト完了後も「成果」を追い続ける

  • 運用フェーズのフィードバックを継続的に受け取る
  • 「納品して終わり」ではなく、「使われ続けることで価値を生む」まで見る

6. まとめ:あなたのプロジェクトは本当に成功したのか?

  • QCD(納期・コスト・品質)だけでは、成功とは言い切れません。
  • 「ステークホルダーの満足度」「チームの持続可能性」「ビジネス的なインパクト」も考慮すべきです。
  • プロジェクト開始時に「成功の定義」を明確にし、終了時には本当に成功だったのかを振り返る習慣を持つことが重要です。

👉 関連記事: [ゼロから始めるプロジェクトマネジメント] プロジェクトのQCDより目的を優先しよう


💡 読者への問いかけ

  • あなたが関わったプロジェクトは、本当に成功したと言えるでしょうか?
  • 形式的な「成功」ではなく、長期的に価値を生むプロジェクト運営をするために、何ができるでしょうか?