SHINCHI, Takahiro
1. システムの複雑化は避けられない
システム開発において、「シンプルにしよう」 という言葉はよく聞かれます。
しかし、現実にはシステムは時間とともに必ず複雑化 していきます。
✅ 仕様追加による機能の増加
✅ システム間の連携が増え、依存関係が絡み合う
✅ 変更を重ねるうちに、コードがスパゲッティ化
こうした事態を放置すると、新機能追加や変更が困難になり、開発スピードが低下 します。
そのため、意識的に「シンプルに保つ」設計が必要 です。
しかし、「シンプルにする」とは具体的に何をすれば良いのか？
それを解像度高く考え、適切な設計をすることが大切です。
2. 疎結合とは何か？ – シンプルなシステム設計の基本
「システムをシンプルにするためには疎結合にしよう」というアドバイスはよくありますが、
実は**「疎結合にしよう」というだけでは、何をすれば良いのか未定義** です。
疎結合とは、システム間の依存関係を最小限に抑えつつ、適切に情報をやり取りする設計 のこと。
ただし、「疎結合 = 通信しない」ではない ことも重要です。
適切な情報のやり取りは必要であり、その情報伝達をいかにシンプルに、かつ意味のある形に整理するか がポイントになります。
疎結合を数値で評価する
「疎結合にする」と言っても、それをどう評価するのかが問題です。
以下のようなパラメータを使って、依存関係の数値的な評価 を行うことができます。
✅ 結合度（Coupling） – モジュール間の依存関係の強さ
✅ 凝集度（Cohesion） – 1つのモジュール内の機能がどれだけ関連しているか
✅ インターフェースのシンプルさ – システム間のデータのやり取りが最小限か
数値で評価することで、主観ではなく客観的に「シンプルかどうか」を判断できるようになる のです。
3. シンプルにするための具体的な方法
① システムの凝集度を高め、疎結合を実現する
- システム内の関連する機能を適切にグルーピングし、一つのモジュールにまとめる
- 逆に、関連の薄い機能は分離し、不要な依存関係をなくす
② Façadeパターン / Mediatorパターンの活用
- Façadeパターン – 複雑な内部構造を隠蔽し、単純なインターフェースを提供
- Mediatorパターン – 各コンポーネントが直接依存せず、仲介者を通じて通信することで、依存関係を整理
例えば、あるプロジェクトでシステム間のやり取りが増え、APIの呼び出しがスパゲッティ状態 になったことがありました。
そこで、Mediatorパターンを導入し、各コンポーネントが直接通信するのではなく、共通の仲介者を介する形 に変更しました。
結果として、変更時の影響範囲が小さくなり、保守性が向上 しました。
③ システム間のインターフェースを明確にする
- データの流れを整理し、最小限の情報だけを渡す
- APIのスキーマを厳密に定義し、変更時の影響を抑える
- インターフェース仕様をドキュメント化し、誰でも理解できる形にする
4. ファクトベースでシンプルにする
「シンプルにする」というのは、単なる感覚的なものではありません。
大切なのは、設計パラメータを明確にし、ファクトで語ること です。
✅ 結合度を数値で測る（依存関係の数、APIコール数など）
✅ 凝集度を評価し、モジュールの分離基準を定める
✅ 設計の変更を定量的に検証し、実際にシンプルになったのかをチェックする
印象論ではなく、具体的な評価軸を持つことで、シンプルさを定義し、維持できる ようになります。
5. シンプルなシステムを維持するには
システムが成長すると、どうしても複雑化していきます。
そこで、シンプルな構造を維持するための継続的な工夫 が必要です。
✅ コードレビュー時に「疎結合 / 凝集度」をチェックする
✅ 設計段階で「結合度」を意識し、定期的に見直す
✅ システム間のインターフェース設計をドキュメント化し、適切に管理する
シンプルにすることは一度やれば終わりではなく、継続的に取り組むべきことなのです。
6. まとめ
- システムは時間とともに複雑化するため、意識的にシンプルにする設計が必要
- 「疎結合」を具体的な指標（結合度・凝集度）で評価し、ファクトベースでシンプルさを判断する
- Facadeパターン / Mediatorパターンを活用し、依存関係を整理する
- 「シンプルにする」ことを主観ではなく、数値や設計基準で明確に定義する
- シンプルなシステムを維持するためには、定期的なチェックと改善が必要
7. 読者への問いかけ
- あなたのプロジェクトでは、システムの複雑性にどのように対処していますか？
- 「シンプルにする」という言葉を使うとき、具体的な評価軸を持っていますか？
- システムの結合度や凝集度を意識した設計をしたことはありますか？
ぜひ、あなたの考えをコメントで教えてください！